報告書を読む「くくりワナを利用したエゾシカ捕獲事業」

狩猟にはいくつか方法があり、もっともイメージするのが猟銃によるハンティング。

私もそのイメージが強かったが、千松さんの書籍を読んでからそのイメージが変わった。

京都の猟師、千松信也さん

千松さんは京都の猟師なので、積雪期の狩猟でも雪と狩猟に関する記載はない。

北海道では積雪期になると数メートル積もるため、積雪期の罠は有効なのか気になって調べている時に発見したのがリンクのPDFであり、それを斜め読みしてみようというのが今回の趣旨である。

「くくりワナを利用したエゾシカ捕獲事業」

https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/hozen/sika/pdf/h24kukuriwana_houkokusyo.pdf

北海道の帯広市の近くにある足寄町で実施された事業であり、二班に分かれてエゾシカ用のくくりわなを仕掛けた成果が報告されている。

インターネットで販売している市販の罠を2種類使って、一日20個の罠を設置して、事業が行われている。10ページあたりから具体的な設置の様子が写真付きで紹介されている。けもの道に配置するが、凍結などの可能性を回避するための試行錯誤の様子が伝わってくる。積雪によってけものみちが明確になるメリットがあることがわかる。

わなの日数と捕獲数のグラフを抜粋して引用しよう。

12月中は、けもの道を明確に判別できていなかった、罠を仕掛ける餌場の状況が整っていなかった、伐採作業の影響を受けてしまったため捕獲頭数が伸びなかったとあり、それ以後、合計31頭はバランスよく捕獲されていることがわかる。

https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/hozen/sika/pdf/h24kukuriwana_houkokusyo.pdf

2種類の罠で差が少なかったとあることから、くくりわなで最も重要になるのは、どこにどのように仕掛けるのか、その点が大きなポイントになりそうだ。

また、罠の凍結や誤動作が43件あったということから、仕掛ける技術の大切さや動物との知恵比べの側面もあることがわかる。24~25ページには誤動作の例が写真付きで紹介されている。また26ページからは凍結防止のために潤滑油を用いることをはじめとした、北海道でくくりわなを行うための実践的なノウハウがまとめられており、興味深い。

文末のまとめは、北海道で狩猟をやろうとしている方にとって有益な視座になると考えられることから、長いが全文引用して、この記事を終わる。

くくりワナによる捕獲事業では、丁寧な設置、見回り、止め射しの労力を、事業実施期間、常に継続させねば捕獲数が伸びない。これに対して、囲いワナであれば、適切な場所にワナを設置すれば、一旦は労力は餌を撒いてメンテナンスを行う 1 名程度で維持可能である。さらに、ワナ周辺を利用するエゾシカが多ければ、餌を一定量ずつ設置して捕獲頻度を上げれば捕獲数が増加する。囲いワナ設置に必要とする労力やコストはくくりワナよりも多く機動性も低いが、ある一定の条件がそろえば、捕獲率が大きく伸びる。銃による捕獲であれば、また異なる特長があり、コストが低く、機動性に富むが、夜間の発砲は禁止されており、市街地近くでも使用が難しい。これらは捕獲手法の違いによる特徴であるので、それぞれの長所を組み合わせて、お互いの短所を補いながら、今後の個体数調整に取り組んでいく必要がある。

https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/hozen/sika/pdf/h24kukuriwana_houkokusyo.pdf