昨年10月に発売された単行本「けものが街にやってくる: 人口減少社会と野生動物がもたらす災害リスク」を一読した。
獣害、という言葉を聞くようになって久しい。
私の住んでいる北海道は、明治に政策として入植した日本人によって開拓された歴史を持つ。
それ以前のアイヌの人々との自然観は、自然との調和、カムイ(神)との調和が主軸だったのだが、徐々に経済優先となった社会構造を背景に、切り拓き、管理し、コントロールするのが自然となった。
人口減少、過疎化などの流れを受けて、地方の衰退に拍車がかかる今日、それと比例して自然動物による農作物などを中心とする被害は増加している。それを危機として警鐘を鳴らし、抜本的な対策の必要性を説いているのが本書である。
狩猟という文化は今日的に趣味的な側面が大きい。
しかし、地方で獣害の被害が大きければ大きいほど、趣味としてではなく、被害の抑制、改善とともに、新たな産業への取り組みとして狩猟産業が各地で徐々に活発化していると感じている。
私自身、狩猟への単純な興味から始まり、徐々にそういった動向に興味を持って情報を収集している段階である。
被害の大きさ、範囲の広さが裏付けている通り、根本的な対応としては、個々の努力では限界があり、事業として、プロとしてある程度のスケールを持ってこうした問題に、官民一体で取り組む仕組みが必要である。
そのことが本書を読み、更に確信できた。

けものが街にやってくる: 人口減少社会と野生動物がもたらす災害リスク
日本の総人口は2008年をピークに減少に転じた。人口減少社会の様々な影響や問題点が指摘されているが、抜け落ちてしまっているものがある。野生動物がもたらす災害リスクの問題である。それは、人間の側の急速な変化の裏返しの現象であり、すでに日本各地で発生して、日々のニュースに流れる頻度も増えている。野生動物の問題は農林水産被害...