
小説家が田舎暮らしの日々について綴った書籍の中で狩猟者たちとの関係の歴史が興味深かった。
田舎暮らしをしたいと考えている人や、狩猟で地域住民との関係に興味がある人などには良書である。
薪ストーブの手間や魅力なども読みやすい文章で書かれており、田園というのどかさのイメージとはまた異なる田舎の世界を垣間見ることができる。街から離れてログハウスを建てて家族で暮らす田舎暮らしの苦労話も都会に暮らすものにとっては楽しめた。田舎暮らしのシンボル的な薪ストーブは見た目ののどかさとは違って薪の準備に始まり煙突掃除などの苦労も絶えない。だが、掛け替えのない魅力があることが伝わってくる。
山奥の静かな土地に暮らしていながらも狩猟期になると粗暴な狩猟者たちによって生活が乱され、愛猫が猟犬にかみ殺される下りは胸に迫る切なさとやるせなさがあった。その土地で代々行われてきた狩猟という文化がある。後から猟場となる土地の隣地で暮らすことになった新参者と古参の住民との対立点は、移住という観点から考えて狩猟に関わらずどこにでも発生しうる。他の土地から趣味としてのハンティングを楽しむように訪れる狩猟者たちにとって田舎の山は一過性の趣味を満喫するための場所となる。住民にとっては生活の場であるという相反する思いが対立する描写に触れて自然という大きな枠組みの扱い方がそれぞれの立場によって七色に見えることが改めて浮き彫りになった。人と自然との関係だけではなく、狩猟は人と人との関係、人と土地の関係においても多くの要素を含んでいる。
純朴な青年と猟犬との出会いなどもあって土地の狩猟者たちと和解してゆく展開に安堵するとともに、狩猟者自体の高年齢化、少数化がその一因であるという現実も地方の問題を色濃く反映している。
ちょっと更新が空いてしまい、かつ、やや乱暴にまとめた。
乱筆お許しください。
